コラム:ユベントスの背番号「10」がみせた輝き
著者:J-JOURNAL 編集部 山口 努
セリエA第28節ナポリ戦のFWパウロ・ディバラの勝ち越し点は、「漫画」のようなゴールだった。
負傷したエースが満を持してピッチに立ち、わずか数分後にビューティフルゴールを叩き込む。そして勝利に貢献する。
フットボールを題材にした漫画ならば、ありきたりのシチュエーションだが、それを実際にできるジョカトーレは世界にどれほどいるだろうか。
スポーツの世界に「もし」は禁句だが、もし、今シーズンFWパウロ・ディバラがチームに帯同できていたならば、どのような足跡を残していたのだろうか。
今シーズンより、ビアンコネーリを率いるアンドレア・ピルロ監督は記者会見でディバラについて問われると、決まり文句のように次のように語っていた。
「まだ完全な状態ではない」と。
どこまでコンディションが回復しているかは不明だったが、多数メディアは「診察結果は良好だが、メンタルが追いついてない」という論調で書き立てた。
筆者の勝手な推測になるが、「明確な治療法はなく、克服できるかは本人次第」といわれる、“イップス”だったのだろう。
無理もない。昨シーズン終盤にふとももに肉離れの怪我を負うも、UEFAチャンピオンズリーグ(CL)リヨンとの2ndレグでは強行出場。
チャンスを作るも、わずか13分間の出場に留まり、足を引きずり、ピッチを退く際の悲壮感あふれる姿は、個人的に昨シーズンのハイライトだった。
今シーズンの開幕は、新型コロナウイルスの影響により、世界中のフットボーラーは短いオフシーズンを強いられた。
そしてディバラ自身もコロナに罹患。さらに原因不明の泌尿器疾患。回復後、ピッチに立つには立った。
だが、そこには“本来”のユベントスの背番号「10」を知るユベンティーニからすれば、本調子からかけ離れたパフォーマンスに映ったはずだ。
そして復調し始めた今年1月のサッスオーロ戦では悪質なタックルを喰らい、左膝の内側側副靱帯に損傷を負った。
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