コラム:ユベンティーノにとってのCLファイナル-後半-
- 今でもユベンティーノの心にあるネドベドの存在 -
ネドベド不在で挑んだACミランとの決勝戦はPK戦の末に敗れる。当時のチームを率いたリッピは、後年「ネドベド抜きで決勝戦に挑むということは確実にエンディングを意味していた」と回想している。
ユベンティーノからも「彼は試合に出れば常に全力を出してくれる」と信頼され「職務遂行の鬼」とも形容された。その言葉たちが示すように、ネドベドは「僕は毎試合全力でプレーするから次の試合のことは考えない」と語っている。
それからユベントスがセリエB“行き”を言い渡されてもチームを離れることはなかった。「残留したのは義務感だよ」と言い切り、「あの時はユベントスに恩返しすべき時だった」とチーム愛を口にしている。
イタリア人でもなく、生え抜きでもなかった彼に決して義務などなかったはずだ。
それから6年後の2009年、ネドベドがスパイクを置く日が近づくとCLでは「ビッグイヤーをネドベドに」といった報道がイタリア国内で過熱する。この年のファイナルの舞台がイタリアでのキャリアをスタートさせたスタディオ・オリンピコだったことも更に熱を帯びさせた。
セリエBからCLの舞台に舞い戻り、優勝を目指した大会前「僕がCL優勝という夢を追い続けているのはそれが原因かもね」と、あの累積警告を振り返っている。
たしかな能力がありながら、代表でもクラブでも重要な試合では出場停止や怪我を負ってしまい、サッカーの神から愛されなかった偉大なるチェコ人は最後のCLでも怪我のため前半13分にピッチを退いている。ベスト16でチェルシーに敗れ、プレーヤーとしての挑戦は終わりを告げた。
リッピはネドベドを「彼は夢の中でも走っている」と形容する。
その存在の在り方を「彼の役割は偉大な選手でいること」と言い「偉大な選手というのはリーダーであり、ピッチ上でもピッチ外でもお手本を示すリーダーであり、ゴールを決めるから賞賛されもする」と最大級の賛辞を贈っている。
現役時代を思い返しても、決して優雅なプレースタイルとは言えなくともMFハビエル・サネッティが嫌がるほどのスタミナで縦横無尽にピッチを駆けまわり、GKジャンルイジ・ブッフォンがシュート練習を嫌がるほどの強烈なシュート力で2003年の準決勝などの大事な試合では得点を決めもした。
現役を退いても、ネドベドの似顔絵が描かれたフラッグがスタジアムで見かけるのは、チームのスポーツディレクターになった現在でもユベンティーノから愛されている何よりの証拠だろう。
バロンドール授賞式では「こんなに素晴らしい賞を貰っても、僕は変わりません。明日は、いつもどおり練習します。なぜならば、僕はジダンやフィーゴやロナウドみたいな、スーパーな選手ではないからです。チームに貢献するため、僕には練習を積み重ねてコンディションを常に良く保つしかないのです」と語るが、後年、選手として最高の栄誉をCL決勝戦のピッチに立てなかった「残念賞」だと怒りを滲ませているのもネドベドの人となりを示すものだろう。
普段のほとんどが無表情で、怒る顔や泣いている顔は思い出せても大笑いしている顔を思い浮かべられるユベンティーノはそう多くはないだろう。
ならば6月6日、ドイツ・ベルリンの地で、この地位まで舞い戻ったユベントスとともにビッグイヤーを掲げた偉大なる元ジョカトーレの満面の笑みが見られることを願わずにはいられない。
コメント
ネドベド少しばかり前の試合でユーべのサッカーにうっきうきでぴょんぴょんしてたくらい観客としては笑顔が多い
ありがとうございます。そう言った御言葉が何よりも運営の励みになっております。
次回のコラムもご期待下さい。
泣けました。素晴らしいコラム、ありがとうございました。彼の悲しみの表情は今でも忘れられません。
いい記事ですね。
近年はメッシ、ロナウドという規格外な選手がいるので仕方がない面もありますが、本来バロンドールは脚光を浴びやすいFWよりも中盤より後ろから選ばれた方が賞としての価値が上がると思います。
ミランの時のような狡猾さでぜひともビッグイヤーをトリノに!
是非彼の破顔した笑顔が見たいものですね。
それにジジに唯一欠けているタイトルですし
ピルロへのお土産としても。
是非勝って欲しい。
全力で応援します