コラム : ユベントスと歩んだ7年間
著者:J-JOURNAL 編集部 座間 遼祐
これで何度目だろうか。
その若者の涙を目にするのは−−−。
5月16日、トリノ郊外にあるアリアンツ・スタジアムには、人目もはばからず泣きじゃくるパウロ・ディバラの姿があった。
在籍期間7年。115のゴールと12のトロフィーをユベントスにもたらした、伝統の背番号「10」を背負う28歳。
そんな彼はホームスタジアムで過ごす最後の夜、チームメイトの陰に隠れ、控えめに振る舞った。
ビアンコネーリのカピターノにして、イタリアサッカー界のレジェンド、ジョルジョ・キエッリーニの退団セレモニーがこの日行われていたからだ。
自身にとっても、ユベントスでのホーム最終戦であるにもかかわらず、「自分はあくまで脇役」。
大先輩の顔を立てるべく、そのスタンスを貫いた。
しかし、不意にチームメイトから餞別(せんべつ)の胴上げをされると、抑えていた感情が堰(せき)を切って溢れ出た。
涙で顔がクシャクシャになるほどむせび泣くと、レオナルド・ボヌッチに手を引かれながら、ゴール裏へ感謝と別れを告げに向かう。
「ちゃんとティフォージに挨拶してこい!」
そう声をかけたであろう同僚の労いの言葉が、その小さくも大きな背中を押す。
スタンドに手を振るディバラと、それに拍手と声援で応える大観衆。そこには世界で最も穏やかな時間が流れていた。
「もっと長い間、一緒にいられると思っていた。だけど運命は僕たちに別々の道を歩ませた」
セレモニーの前日、ディバラが自身の『Instagram』に綴った言葉だ。
契約延長を試み、幾度も会合を重ねたが、彼の代理人を務めるホルヘ・アントゥン氏は、ユベントスが提示した年俸額に対し、首を縦に振ることはなかった。
そして、ディバラとユベントスの“ラブ・ストーリー”は終焉を迎えた。