コラム:ピルロ監督への期待、アッレグリがユベントスに残した偉大すぎる足跡
著者:J-JOURNAL 編集部 山口 努
“奇跡”のスクデット10連覇を目指したビアンコネーリだが、セリエA第33節フィオレンティーナ戦に引き分けると、実質、その“夢”は潰えた。
その2日後、トリノに居を構えるイタリア紙『TUTTO SPORT』は27日、一面に次のように書き立てた。
「ピルロよ、君は解任だ。仮免許ではフェラーリは乗りこなせない。ユーベはアッレグリを戻すべき」と。
どんなに有能なフットボールの監督でも好不調の波があり、不調に陥れば、必ず前任者と比較されるものだ。
今シーズンより監督業“自体”をスタートさせたアンドレア・ピルロ監督にも、容赦なかった。
マウリツィオ・サッリ氏の記録と比較され、そして、UEFAチャンピオンズリーグ(CL)のタイトル以外のすべてをユベントスにもたらしたレジェンドとの比較も当然された。
ユベントスの黄金期を築いたマッシミリアーノ・アッレグリ氏の成績は、今後も燦然(さんぜん)と輝くものになるだろう。
就任した2014/15シーズンから連続してスクデット5連覇、コッパ・イタリア4連覇、そして2度のスーペルコッパ・イタリアーナ獲得。
UEFAチャンピオンズリーグ(CL)ファイナリスト2回。今、思い返しても驚異的な監督だったことは誰の目にも明らかだろう。
そのアッレグリ氏と比べられるピルロ監督は、いささか気の毒でもある。
新型コロナウイルス、攻撃の中心に考えていたFWパウロ・ディバラの長期離脱、など擁護できる要素はあるものの、アッレグリとは経験の差は否めないものだろう。
前任者のサッリ氏にも同情の余地はある。おそらく、だが自身の望む選手たちでは戦えなかったはずだ。
そして運もなかった。
CLリヨンとの2ndレグは、新型コロナウイルスの影響で中断されたが、観客の入ったアリアンツ・スタジアムで戦えていたら…など擁護できる要素はたくさんある。
では、アッレグリはいったい何を考えていたか、どのような世界観でフットボールを捉えているのか。
筆者は恥ずかしながら5年間、大まかな部分でしか理解できずにいた。
何十、何百回も記者会見を確認してきたが、イタリア語をほぼ完璧に理解していなければ分からない表現を多用する監督だった。
世の中には「ユベントスのことをより多くの人に知ってもらいたい」と考える、聖人のような日本人ユベンティーノがいる。
先日、「アッレグリが何を考えていたか」の一端を感じることができる動画を発見したので、紹介したい。
それまでの記者会見にはなかったユーモアを感じられたし、引退会見にあった“涙”を誘うシーンもなく、微笑ましい笑いを誘われたシーンが幾度となくあった。
是非、多くのユベンティーニがこの動画を目にすることを願う。そして、悪くいえば、この天才監督によってユベンティーニは勝利に慣れすぎてしまったことは否めない。
スクデット連覇もコッパ・イタリア連覇も、プロビンチャを蹂躙(じゅうりん)することも簡単なことではない。
だが、アッレグリという稀代の名将は、いとも簡単にそれらをやってのけてきた監督だった。
ピルロ監督の解任論が叫ばれる昨今だが、サッリ氏に、当然アッレグリ氏にあって、現在ユベントスを率いる“新米監督”にないものはどのような要素だろうか。
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