コラム:世に知らしめたユベントスの移籍
この男の顔を知らなくても、この男の手がけた“仕事”はサッカー界にひろく知れ渡っている。
このイタリア人の“お眼鏡”にかかったMFジネディーヌ・ジダン、MFパヴェル・ネドベド、FWズラタン・イブラヒモヴィッチなどはユベントスを通じてスターダムにのし上がっていった。
1984年、MFディエゴ・マラドーナの移籍で名声をえる。バルセロナからこれから入団するナポリのことをまったく知らせずにイタリアに向かわせたのだ。
およそ7万5000人の超満員になったサン・パオロにヘリコプターで降り立つ入団会見をプロデュースする。当時から絶大な人気があったマラドーナの加入にナポリのティフォージたちが興奮しないはずがない。
ところが、初のキャンプの際にマラドーナは異変に気づく。チームメイトのプレーぶりを見て「昨シーズン何位で終えたの?」と、聞いたという。
当時のナポリは降格圏を争うチームだったのだ。つまり、マラドーナはほぼ騙されてナポリに連れて来られたのだ。そのチームに初のスクデットをはじめ数々のタイトルをもたらしたことなどが、マラドーナが現在でも神格化される理由の一つだろう。
この不出世の天才をイタリアの下位チームに移籍させた人物は1994年にユベントスのGM(ゼネラルマネージャー)に就任。ユベントスに数多のスタープレイヤーを移籍させ、良くも悪くもビアンコネーロを有名にさせたルチアーノ・モッジその人だ。
「俺は今まで補強で失敗したことがない」と現在でも豪語し、「ユーヴェではわがままは許されない」というクラブのポリシーを最優先に在任中のメルカートを牛耳った。
わがままを言ってディディエ・デシャンは追われ、クリスティアン・ビエリも同様に追い払われた。ちなみにビエリを移籍させ水面下でFWフィリッポ・インザーギを確保している。
メルカートの鉄則を決して忘れない仕事人だった。
特筆すべきは、ほぼ無名のジダンを世界最高の選手に変えた先見性だろう。1996年にボルドーから3億円で買い、2001年にレアル・マドリーに90億円で売ったニュースはユベントスの買い物上手を世に知らしめた。
ジダンに確かな才能があったのは間違いないが、入団時にまったくと言っていいほどフィットしなかったフランス人にマルチェロ・リッピはさじを投げかけたが、「使い続けろ」と指示したのは他でもないモッジだった。
ちなみにリッピの才能を見出したのもこの男になる。
コメント
とても人柄で口説くタイプには見えないからよほど交渉力があるんでしょうねぇ。
昨季の成績も知らないチームに移籍を決めて、優勝させちゃうマラドーナもおかしいけど(笑)
マラドーナがセリエに来た時はまだほんの子どもでしたが、
父親がうるさかったのを覚えています