J-JOURNAL 5周年企画「実況者から見たユベントス」後編
ユベントスは昨シーズン、クラブ史上初の「三冠」を目指したが一冠のみに留まった。
ファンにとっては苦い記憶となっているが、実況者としてビアンコネーリを見てきた人物にはどのように映っているのか。
昨季、セリエAとUEFAチャンピオンズリーグ(CL)で数多くの実況をした野村明弘氏に近年と今シーズンのユベントスの印象を訊きました。
マウリツィオ・サッリのチェルシー時代や今シーズンのセリエA展望を語っていただいた前編に続き、後編ではCLを中心に、メディアのあり方についても話を伺いました。
【野村 明弘】
実況者。株式会社フットメディア所属
大学卒業後、長崎文化放送株式会社に入社。2003年に単身渡英。プレミアリーグを肌で感じる生活を送り、2005年に帰国。
帰国後、現職に至る。現在、国内外問わず数多くの実況を担当している。
ーー昨シーズンのCLベスト8アヤックス戦で1stレグ、2ndレグでは実況されました。「昨シーズンのユベントス」について、どのような印象を抱いておりましたか?
私は「今シーズンこそビッグイヤー獲得を」と考えておりました。野村さんの見解をお聞かせください。
昨シーズンに関して、2016/17シーズンのCL決勝・レアル・マドリー戦を担当したシーズンよりもおおくの試合を担当させて頂きました。セリエAでは数試合、CLのグループステージも数試合、そしてアヤックス戦と…。
ユベントスがビッグイヤーに近づいたシーズンの決勝戦をふり返ると、組織の上ではマドリーよりユベントスのほうが数段上のように感じました。
それは解説でご一緒した戸田(和幸)さんも同意見でした。マドリーとの間には“個の力”の部分で差を感じたんですよ。
そう思っていたところでクリスティアーノ・ロナウドがやってきて、ピースが完全にハマったと思ったんですよね。一人で何十点も取ってくれる選手であり、象徴のような選手。
チームにとって一番ベストな選手が来たのかな、と。なので、僕も「ひょっとするとユベントスはCLを獲るかもしれない」、そう思っていました。
ただ、僕が担当したアヤックス戦前後を含めてみていると、ユベントスは(主力が)一人いないとキツいように感じました。
特にディフェンスラインでしたね。(ジョルジョ)キエッリーニや(レオナルド)ボヌッチのどちらかが抜けると、もう愕然に落ちる印象ですね。
――たしかにかなり落ちましたね。
そのミスでやられていた試合が多かったので、やっぱりそこ部分なのかなと。(2年前の)マドリーが優勝したあのシーズンっていうのも、決勝戦の前日練習を見ているとサブのメンバーを含め全員がみんな巧かったんです。
やっぱり底上げというか、各ポジションに二人ずつぐらいスーパーな選手がいないとリーグとCLの「二冠」はキツいのかなと感じます。
あとは「(ミラレム)ピアニッチがいなくなったらどうなのか」とか、「(ファン)クアドラードと(ドウグラス)コスタが怪我をしている。そういうときに他にそういうタイプはいるのか」っていうところに差を感じました。
チームの年齢層も高いですし、怪我人が出たときのマネジメントとかそういったところが結局のところ敗退に繋がってしまったのかなと思いました。
この何年かでもうちょっと若い選手を入れて、競合させるようなところをもっと各ポジションで作っておけなかったのかなぁとは感じました。
コメント
日本のフットボールファンの中でユベンティーニやセリエAのファンを中心に戦術を議論する場が増えると良いですね。
個人的にも戦術の理解を更に深めて、より楽しく観戦できる様になりたいと思います。