コラム:おとぎ話の序章
「1994年のフィオレンティーナ戦でのゴールだ。左後方から飛んできたロングボールを、右足アウトサイドにダイレクトで当てて決めたあのゴールは、僕の名を世界に広めてくれることになった」と彼は自身の著書で話している。
ユベントス入団から2年目の12月、あまりにも美しいゴールに世界中が彼を認知した。1960年代に活躍したジャンピエロ・ボニペルティ氏はユベントスにキャリアのすべてを捧げ、クラブ最多得点記録179得点という記録を残し、ビアンコネーロで選手生活を終えた。
のちに会長職に就いていた1994/95シーズン、自身が惚れこみチームに招き入れ、みいだされた若き才能がついに花開いた。サッカー選手として線は細かったが、類まれな才能をもった青年を偉大なバンディエラは見逃さなかった。
荒れた鳥の巣のようなボサボサ頭だが、端正な顔立ちをもった彼の名はアレッサンドロ・デル・ピエロ。ユベントスの背番号10を長きに渡り背負い、チームを去って5年もの月日が経った現在でも「永遠のバンディエラ」としてティフォージたちに愛されている。
デル・ピエロの秘めたる力を見抜いていた同氏であったが、まさか自身が45年間、保持していたチーム最多得点を更新されてしまうとは夢にも思わなかっただろう。290得点を記録し、デル・ピエロは2012年にユベントスを去っている。
ESPN FCデル・ピエロの語る「僕の名を世界に広めてくれることになったゴール」を次期10番候補のFWパウロ・ディバラに当てはめると、間違いなくUCL(欧州チャンピオンズリーグ)準々決勝1stレグでのバルセロナ戦になるはずだ。
試合前から注目度は高かった。欧州サッカー界において低迷がつづくイタリア国内では俄然高く、ガゼッタ・デッロ・スポルト紙は「おとぎ話の夜」と表現し、コリエレ・デッロ・スポルト紙は「決勝戦のような試合」と銘打った。
その試合でディバラは後世まで語り継がれるテクニカルな2得点を決め、3-0の勝利に貢献した。イタリア各紙は大いに盛り上がりをみせ、ガゼッタ紙は「計り知れない至宝」と賛辞をおくり、コリエレ紙は「新たなメッシ」とFWリオネル・メッシを“過去の人”へと追いやった。
同じトリノに居を構えるトゥットスポルト紙は、かつてメッシが異次元と呼ばれたことを否定するかのように「メッシって誰?ディバラは異次元」と賞賛している。
この勝利はパウロ・ディバラの名を世界に知らしめた。
自身は試合直後のインタビューに、嬉しさを抑えきれない笑顔で語りつつ「子供の頃から夢見ていたことが達成できた」と笑顔で答え、胸に抱きつづけた夢を吐露した。
Mirror大きなリードをもってバルセロナのホーム・カンプノウに乗り込むユベントスだが、油断はない。たとえベスト16のPSG(パリ・サンジェルマン)戦で1stレグの0-4から2ndレグで6-1の大逆転したバルセロナとはいえ、マッシミリアーノ・アッレグリ監督は「開始30分が重要」と強調している。
たしかにバルセロナは前半開始3分にFWルイス・スアレスの得点で波に乗った。だが、忘れてはならないのは後半開始5分にもメッシが得点していることだろう。PSGが自陣に引いて守備したこともあるが、そのことにもアッレグリは「我々は前に出る必要がある」と油断をみせていない。(アッレグリ、負傷のディバラについて「楽観的」より)
そして昨シーズン、バイエルン・ミュンヘン戦で悪夢をみたアディショナルタイムにも注意を払いたい。サッカー界でよく云われる試合開始からの5分間と、ハーフタイムの前後5分間、そして試合終了前の5分間「魔の時間帯」をいかに攻略するかが鍵となるはずだ。
Squawkaバルセロナ戦の1stレグはディバラの活躍により、フォーカスされることが少なかったがGKジャンルイジ・ブッフォンの攻守も光り、今シーズンは好調を維持しているだけに2ndレグでも変わらない安心感をティフォージに与えてくれるだろう。
バルセロナを見事打ち破りベスト4に進出すれば、ユベントスの欧州制覇は近づくはずだ。イタリア王者にとっては2ndレグこそ試金石であり、近年世界の盟主であり続けているバルセロナにはその価値がある。そのことを踏まえると3点のリードは油断できるものではない。
両チームがベスト4進出を期待しているのがサッカーの魅力の一つだ。バルセロナのファンたちは大逆転を期待し、ユベントスのティフォージたちは鉄壁の守備とクラブの伝統でもあるハードワークを信じている。
そして、かつてはデル・ピエロが、現在はパウロ・ディバラがつむぎ出す“おとぎ話”が今後もつづくことを信じている。時代が変わってもファンタジスタの閃(ひらめ)きをユベンティーノたちはいつの世も信じている。
著者/Juventus Journal 編集部 山口 努
コメント
天敵バイエルンがいなくなったし、優勝が現実になりそうだ
ディバラに10番は似合ってるけど、でもなんか21でいて欲しい気もする…
アウトサイドシュートは子供の頃の記憶だけど、いまだに鮮明に覚えてる
なんでもすぐ忘れるたちだけど
ユーベがその後たどる運命などまったく思いもよらなかった頃
ホント、ディバラがNO.10を継いでほしい
アシストはオルランドじゃないかな?
あのデル・ピエーロのゴールは彼のベスト・ゴールだと思っている。0-2からヴィアッリの2ゴールで追い付いた後、左サイドのセンターライン当りからヤルニが上げたボールに反応して決めたゴールだった。
試合後、トリチェッリやヤルニ、リッピ監督が彼をハグしたシーンがとても印象的でした。
1994-95シーズンはパルマとスクデット&コッパ・イタリアを争った時で、国内2冠を達成した素晴らしいシーズンでした。
丹精は端正ほうが合っていると思います
ご指摘ありがとうございます。修正しました。
新旧のバンディエラが紡ぐおとぎ話。良いですね。胸が熱くなりました。負傷がちと心配ですが、彼ならばやってくれるでしょう。
パリとは守備のクオリティが違うことを見せてやりましょう!