コラム:進化しつづける予測不能な“アッレグリユベントス”の「完成形」
そしてこの試合のみならず、今シーズンの勝利に貢献しつづけているDFジョルジョ・キエッリーニには、カピターノとしての自覚を強く感じさせるのは少数派の意見ではないはずだ。
GKジャンルイジ・ブッフォンから主将の座を受け継いだ背番号「3」は、これまで呪いにかけられたようにビッグマッチ前に怪我を負い、欠場を余儀なくされていた。
今シーズンはビッグマッチでこそ真価を発揮し、長期離脱もなく今日まで至っている。ここまでの公式戦では22試合に出場。
チーム8位となる1852分間の出場は、34歳までに培った“肌感覚”によるものなのはほぼ間違いないだろう。
前途の長友が抱く「ユベントスの守備の強さ」の一端はキエッリーニが担っているはずだし、今後もその強さでチームの勝利に貢献してくれるはずだ。
かつてユベントスがセリエBに落ちた2006年にビアンコネーロのシャツに袖を通し、セリエA復帰に貢献し、その後の暗黒期を支えたニコラ・レグロッターリエは戦友を次のように評する。
「キエッリーニは上質なワインのようだね。年齢と共に円熟味を増している。今シーズンは彼のキャリアの中で最高のものの一つだと思うね」
「現時点で世界最高のDFのベスト3に入る。彼は完全に成熟した。現在はチーム全員の模範となっている」と後輩に賛辞をおくる。
近年のサッカー界では若く才能のあるDF陣が注目を集めている。そのことについては「我々イタリア人は30~35歳のときに真価を発揮するんだ」
L’ARENA del CALCIO「何よりキエッリーニがそれを証明しているじゃないか。今シーズンのユベントスは傑出している」
「クリスティアーノのようなカンピオーネとサッカー界を支配する運命にある。ビアンコネーロはCLを奪還するシーズンになるかもしれないね」と期待を寄せている。
レグロッターリエが口にしたCLは来月、ベスト8進出の座を懸け欧州各地で開催される。“アッレグリユベントス”の「完成形」は、果たして見られるのだろうか。
何をもって「完成形」とするか。それはユベンティーニによって異なるだろう。ひょっとしたら、すでに完成しているのかもしれないし、まだ未完成のままなのかもしれない。
今年6月、ユベントスが1995/96シーズン以来となる23年ぶりとなるCLを制覇したとき、そのサッカーを「完成形」と呼ぶことができるのではないだろうか。
かつてバルセロナのサッカーが旺盛を極めたとき、メディアやファンは彼らのサッカーを「Tiki-taka」と称賛した。
新たなサッカー用語が市民権を得られるのは、圧倒的な勝率を誇るチームに許される勲章のようなものだ。現在のユベントスの勝率は、その基準に満たしているはずだ。
ひょっとしたらアッレグリの緻密な、相手に合わせて、劣勢を覆すために色を変えられるカメレオンのようなサッカーにも名前がつくかもしれない。
その「完成形」に名前はまだない。
著者:J-Journal 編集部 山口 努