コラム:アッレグリの叙事詩
言うまでもなくサッカーというスポーツは、ボールをいかにオフサイドの“網”にかからずにゴール前に運べるかが鍵となる。
究極をいえば1990年代初頭から2000年台初頭にサッカー界を牽引したブラジルのロナウド氏が分かりやすい。
ハーフラインから一人でドリブル突破をしてネットを揺らしさえすれば、攻撃は成り立ってしまうのだ。こむずかしい戦術論など必要ない。
サッカー史上に残る金言が生まれたのはこのためだろう。ロナウド氏がバルセロナに所属していた1996/97シーズン。
記者から「攻撃の戦術があるのか」と揶揄された故ボビー・ロブソン監督(1933-2009)は「私の戦術はロナウドだ」と言い返したのは語り草となっている。
「怪物」や「超常現象」を指す「フェノーメノ」という言葉はそこから生まれ、現在でも「ロナウド」を形容する言葉となっている。
語弊がある言い方を許してもらえるなら、クリスティアーノにそこまでの能力はない。
というよりも、今後のサッカー界に「2代目フェノーメノ」が誕生する可能性は今後も極めて低い。それほどロナウド氏は稀有な存在に思える。
サッカー界の戦術も当時と比べ、より複雑になっているのもその「誕生」をむずかしくしている。
JZSport Newsしかし、アッレグリはクリスティアーノの能力を遺憾なく発揮させている。
お気づきのユベンティーニも多いかと思うが、バロンドーラーは試合終了が近づく後半。サイドからセンター“寄り”にポジションを移す。
FWマリオ・マンジュキッチが入っても、それは変わらない。クリスティアーノの脚力をもってしてPA付近までボールを運んでさえすれば、得点の確立が上がるといった算段だ。カリアリ戦の3点目はその顕著な例だろう。
アッレグリはCLマンチェスター・ユナイテッド戦で今シーズン初の黒星を喫したが、ミラン戦ではスコアに差はあったもののDFアンドレア・バルザーリの投入を行わなかった。
これまで、負けるたびにチームをアップデートさせてきた敏腕指揮官だ。交代カードを一枚残しながら、これまでの常套手段を用いなかったのは今後も興味を膨らませるものになるだろう。
ユベントス史上屈指の監督となっているアッレグリは、今夏クラブに別れを告げようとした。
しかし、クリスティアーノの加入はこの指揮官の胸中を変えた。
そして前途のカリアリ戦ではクラブレコードを更新してみせた。今後もつづく“二人三脚”は、ユベントスの歴史を大きく塗り変えていってくれるだろう。
アッレグリの壮大な叙事詩(じょじし)はまだ綴られている途中なのだ。
コメント
ワンマンチームにだけはならないでほしいね
監督変わって多少上向いて来たけどあんだけタレント揃ってるレアルでさえロナウドが抜けてボロボロになってる様を見てたら得点源を一人の怪物に任せっきりになるのは危険すぎる。