レポート:「カルチョポリ」で受けたユベントスの損害と展望
「カルチョポリ」を“解決”の方向に。立ち止まらずイタリアサッカーの再興を
2006年、当時ユベントスのGMを務めていたルチアーノ・モッジ氏を主犯として生じた、組織的な審判買収と審判への脅迫による不正、いわゆる「カルチョポリ」に関して、今月の23日に最高裁判所裁判が行われ、その主犯と疑われていたモッジ氏に無罪判決が言い渡された。繰り返すようだが、これはすなわち、同じくユベントス自身が「カルチョポリ」に関与したことが証明されなかったことになる。しかし、実際には、ユベントスが2004-2005シーズン、2005-2006シーズンの2度獲得したスクデットが剥奪され、クラブ史上初となるセリエB降格という実刑を受ける結末となった。
現時点でいえることは、無罪であったユベントスがこれらの刑を受けた。すなわち冤罪であったということだろう。冤罪によって、ユベントスは2度のスクデット剥奪にセリエB降格を味わったが、もちろんそれだけではない。サッカークラブの“財産”であり、尚且つユベントスのスーパースターであった選手達を放出せざるを得ない状況となった。
当時のユベントスは、ファビオ・カンナバーロ、リリアン・テュラム、ジャンルカ・ザンブロッタ、エメルソン、パトリック・ヴィエラ、ズラタン・イブラヒモビッチなど数々の名選手が在籍していた欧州トップクラスのサッカークラブであった。さらに、イタリアで最もリーグタイトルを獲得し、数々のイタリア代表選手を輩出し、“イタリアの恋人”と言わしめたユベントスのブランドイメージを減殺させた。これは、同時にイタリアサッカー界のブランドイメージ低下を引き起こしたと言わざるを得ない。
それほど、イタリアサッカーに大きな影響を及ぼした最大のスキャンダルが、証拠も十分に収集されないままに、確定事項として世に出てしまったこと自体信じがたいものであるが、これから、ユベントスはこれまで被ってきた損害の賠償を、FIGC(イタリアサッカー協会)に対し請求していく構えだ。
ユベントスがFIGCに対して請求する詳しい賠償額は定かではないが、イタリアのメディアによると、およそ4億3000万ユーロほどではないかといわれている。もちろん、現在も係争中であり、賠償額の全額が支払われるのかどうかも不透明な状況である。しかし、仮にユベントスがこの賠償額を手にすることになれば、ユベントスの経済にとっては、少ない額だとは到底いえないだろう。だが、ここで強調しておきたいのは、この賠償額はユベントスにとって“利益”すなわち“儲け”ではなく、あくまで損害に対してFIGCが行う法規上の責務だ。繰り返すが、なぜなら、ユベントスはあくまでも今“被害者”の立場であるからだ。もちろん、この損害賠償額の今後の使い道について議論するのも“道徳上”正しいものとはいえないだろう。
一方で、無罪判決を勝ち取ったユベントスの前GMルチアーノ・モッジ氏は、「カルチョポリは終わっていない」と『La Repubblica』に対してコメントしている。なぜなら、「カルチョポリ」によって、モッジ氏にはイタリアサッカー界からの永久追放処分が科される結果となったからだ。これから、モッジ氏はその処分の撤回を求めて、欧州人権裁判所に提訴する運びのようだ。
一部のメディアでは、「モッジ氏の逆襲」という表現が用いられていたが、一方でイタリアサッカー界への復帰を計画している可能性も報じられている。復帰の是非については、賛否両論あるだろうが、“悪代官”のイメージが強く残ってしまったモッジ氏が復帰することが、イタリアサッカー界のブランドイメージ低下に繋がることもまた懸念される話だ。もちろん、他のクラブサポーターからみれば、ユベントスもまだ同様のイメージなのかもしれない。一度ついたイメージを払拭するのはとてつもなく大変な作業だろう。
結果的に、“幻”のスキャンダルの姿が表面に浮き出た結果となったが、これも含めて、イタリアサッカーの再興の鍵は、サッカーにおける実績としかいいようがない。サッカーはあくまでスポーツであり、見る者を楽しませるショーである。もちろん、「カルチョポリ」が真の意味で解決したことにはならないが、時間を掛けてクラブ同士で争論するよりも、互いが良きライバルとして切磋琢磨し、イタリアサッカーを盛り上げるために、手を携えるクラブの姿をサポーター達は見たいのではないだろうか。今のところ、まだそのような姿とは程遠いようにみえてしまう。
イタリアサッカー界は、課題山積だ。
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written by ユベントス・ジャーナル