コラム:偉大な6本の柱
前人未到となるセリエA6連覇のセレモニーのときだった。優勝メダルを首にかけられたMFクラウディオ・マルキージオは涙をみせた。これまで5回ものセレモニーに参加した、偉大な背番号「8」の過去をみてもセレモニーで涙を見せなかったはずだ。
少年時代よりビアンコネロに憧れ、ユベントスのプリマベーラで育ち、アレッサンドロ・デル・ピエロに憧れた。奇しくもマルキージオのユベントスでの初ゴールは、憧れたバンディエラのアシストから生まれている。
プリンシペと愛されるイタリア代表MFがビアンコネロのトップチームに昇格したのは2006/07シーズン。セリエB時代である。極端な言い方を許してもらえるならユベントスがセリエBで戦わなければ、マルキージオがビアンコネロのユニフォームに袖を通せたかは不透明だ。
およそ10年前のユベントスは名実ともに「無敵」に近かった。GKにジャンルイジ・ブッフォン。DFラインにはファビオ・カンナバーロ、リリアン・テュラム、ジャンルカ・ザンブロッタがいた。
FWにはダビド・トレゼゲ、ズラタン・イブラヒモビッチ、そしてデル・ピエロ。マルキージオが主戦場とするMFにはパトリック・ヴィエラ、エメルソン、マウロ・カモラネージ、そしてバロンドーラーのパベル・ネドベドがいた。マルキージオがいかに有望な新人だったとしても、偉大な選手たちをベンチに追いやれたかどうか。
Sports.ruそんな「無敵」だった彼らをもってしてもUCL(欧州チャンピオンズリーグ)のタイトルには手が届かなかった。しかし、来シーズンこそは、という想いはユベンティーノたちにとっても共通の言語だったし、クラブにとってはいつの世も変わらない悲願だ。
その悲願はカルチョポリとともに打ち壊される。
櫛(くし)の歯が欠けたように多くの主力が抜け、残ったメンバーでセリエBを戦い、見事1年でセリエAの舞台に戻った。その後、無罪にはなったもののチームはかつての輝きを失っていた。その当時を生ける伝説となっているGKジャンルイジ・ブッフォンは赤裸々に話している。(苦しかった過去を語るブッフォン「自身10度目のスクデットだ」)
輝かしい未来を感じられず、低迷期にあったユベントスをアントニオ・コンテが変えた。2011年にチームを任されるとチームのアイデンティティをふたたび注入。監督就任初年度に無敗優勝を成し遂げ、かつてあった“負けないユベントス”を取り戻し、その後セリエA3連覇に導いたのは記憶に新しい。
ところが2014年突然チームを去る。その後マッシミリアーノ・アッレグリがチームを任されると、20年ぶりのコッパ・イタリア制覇、セリエA4連覇、UCLでは12年ぶりに決勝戦の舞台まで導いた。
絶好調のチームを引き継いだ監督ほど窮地に立たされるものだが、アッレグリはチームを維持したうえにバージョンアップさせながら、より強固なユベントスを築いて名実ともにクラブ史上歴代屈指の監督となっている。
BlackWhiteReadAllOver.comアッレグリは「簡単に優勝できる大会などない。ましてや6連覇などもってのほかだ。6回の優勝すべてに貢献したブッフォン、(ステファン)リヒトシュタイナー、(アンドレア)バルザーリ、(ジョルジョ)キエッリーニ、マルキージオ、(レオナルド)ボヌッチに大きな拍手を贈ってあげてください」中心選手たちを褒め称えている。
前人未到となった6連覇セレモニーの後、ブッフォン同様コンテ以前のチームを知るバルザーリは「一番意外だったのは最初の優勝かな。誰にも期待されてなかったからね。そのあとの優勝は周囲の期待に応えたと言っていいと思う」と振り返っている。
「なかでも一番難しかったのはメンバーが大幅に入れ替わった昨シーズンの優勝だね。でも、あの変化がなかったら今の僕たちはなかったし、6連覇も難しかったかもしれない。それにUCL決勝まで勝ち進むこともできなかったかもしれないね」と口にしている。
中心選手たちの存在、コンテの存在、フロントの眼力、アッレグリの手腕が現在のユベントスを築いている。2014/15シーズン、UCL決勝進出で古豪復活を世に知らしめたが、バルセロナに1-3で敗れ名門復活には至らなかった。
では、今回のUCL決勝戦はどうだろうか。
ここまで無敗を貫き、わずか3失点しか許していない。王座奪還という猛々(たけだけ)しい言葉は当て嵌(は)まらないが、古豪復活という言葉はもはや適切ではないはずだ。
Twitter.com真の名門復活のための狼煙(のろし)を決戦の地カーディフで上げられるか。幾多もの悔し涙を流したユベントスは、ウェールズでどのような涙に変えることができるか。
あのときマルキージオが流した涙は、10年前のどん底から這い上がった者だけしか知り得ない感慨だろう。この6年間でイタリアの盟主に返り咲き、そして今シーズンふたたび欧州の頂点を見据え、手の届く位置にある。
欧州の強豪。その市民権を得るにはUCLのタイトルが必要不可欠となる。
若くしてチームを牽引するFWパウロ・ディバラも現在のチームの強さに自信を伺わせ、メンバーたちも決勝戦の相手レアル・マドリーに恐れを抱いていない。(ディバラ「ユベントスは2年前よりも強い」、 今シーズン最後の戦いへ)
カルチョポリから、低迷期を経て、コンテ時代とアッレグリ時代には多くの才能たちがチームを去った。それでもユベントスのためにチームに残留し、クラブを愛し、支えてくれた偉大な6本の柱は、現在頼もしい仲間とともに決戦の地カーディフにいる。
著者/Juventus Journal 編集部 山口 努
コメント
バッジオに魅了されてからずっとユーベサポですが、今年こそユーベがユーロチャンピオンになるところが見たいです。カルチョスキャンダルがあってユーベサポを辞めようと思ったけど、デル・ピエロやブッフォンが残ってくれたからずっとユーベサポでいられたました。カルチョスキャンダルがあってもユーベに残留してくれたネドベドやトレゼゲや他のプレイヤー達の為にも今日は絶対に勝ってほしい。
ありがとうございます。
胸が熱くなりました。
ぜひ勝ってくれる。
そう信じてます!!
さぁここまで来れば、何が何でも勝つ!
世界をあっと言わせる、ユベントスのサッカーをしましょう!
ブッフォンにCLカップを!!
みなさんで日本から応援しましょう!!
素晴らしいコラム、ありがとうございました。途中から涙が込み上げてきました。
この涙が喜びの涙となるよう、明日のファイナルは死に物狂いで応援します!
ただのユーベファンさん
ご拝読ありがとうございます!
素晴らしい夜明けを迎えましょう!
素晴らしいコラムでした。
ユーベファンとして、カルチョポリから残り続けてくれたブッフォン、キエッリーニには、心から感謝していたし、それを経ての今のチーム、本当に見ていて嬉しく思い、偉大な6人に敬意を抱きます。
ユーベファンでい続けて良かったと思っている今日この頃です。
だからこそ、ブッフォンがビッグイヤーを掲げる瞬間が本当に見たいです。
ご拝読ありがとうございます!
明日は素晴らしい夜明けを迎えましょう!
今のチームならやってくれると思います!