コラム:近年の大型補強がもたらした功績
レアル・マドリードは2013年、8,500万ポンド(当時レート:約128億円)という正気の沙汰とは思えない大金をトットナム・ホットスパーに支払ってまでFWガレス・ベイルを獲得した。
すると、この快速ウェールズ人FW は加入1年目で2001/02シーズン以来となる10度目のビッグイヤーを白い巨人にもたらした。ベイルはUCL(欧州チャンピオンズリーグ)決勝戦で1-1の延長戦後半に拮抗した状況を打開する逆転ゴールを叩き込み、8,500万ポンドの価値を示した。
マドリーの宿敵、バルセロナも2014年にFWルイス・スアレスをリバプールから獲得する。この移籍に世界中がその必要性を議論した。世界有数の下部組織を擁し、数多のスター選手たちをサッカー界に送り出してきた巨人が、このウルグアイFWに支払った8125万ユーロ(当時レート:約111億円)。
いくらバルサが2010/11シーズンを最後に欧州制覇から遠ざかっていたとはいえ、当時のFW陣にはFWリオネル・メッシ、FWネイマールといった世界屈指の顔ぶれが揃っていた。それでもスアレスを獲得した。
「興行のため」と揶揄(やゆ)されながらも、のちに“MSNトリデンテ”と名づけられた3人は凄まじい破壊力でこのシーズンのサッカー界のタイトルを総ナメにする。スアレスはベイルと同様に、加入1年目でチーム5回目のUCL制覇に貢献しているのは見逃せない。
言わずもがな話ではあるが、このシーズンのUCLの決勝戦でバルサに負けたのがユベントスだ。
tuttosport.comそのユベントスは今シーズン、FWゴンサロ・イグアインを9,000万ユーロ(当時レート:約102億円)でナポリから獲得した。加入当初こそ噛み合わないシーンが多々目立ってはいたものの最近では手がつけられない状況となっている。
毎試合ごとに連携を高めていることが確認でき、特筆すべきは第22節のサッスオーロ戦が思い出される。巧みな駆け引きで相手DFを翻弄すると、DFアレックス・サンドロのグラウンダーのクロスに合わせネットを揺らした。
たしかな連携がなければ決められないだろし、双方の理解がなければ生まれなかった得点だったはずだ。第25節のパレルモ戦でもFWパウロ・ディバラのパスにイグアイン、イグアインのパスにディバラといった得点シーンも見られたのは今後を見据えたとき、頼もしいホットラインであり、大きな期待を寄せられるシーンだ。
La Gazzetta dello Sportチームも革命的なシステムを手にした。
今シーズンは4連勝の後に黒星を喫する不安定なチーム状態だったが、2-1で敗戦を喫した第20節アウェイのフィオレンティーナ戦以降、FWマリオ・マンジュキッチ、FWファン・クアドラード、ディバラ、イグアインの4人のFWを前線に並べる4-2-3-1の奇策を用いている。
FWを4人並べる、という多少、子供じみたシステムが殊(こと)のほか当たった。マンジュキッチの献身性、クアドラードの突破力、ディバラの煌めき、イグアインの嗅覚が混じり合い第21節のラツィオ戦以降、怒涛の6連勝を飾っている。
余談ながら、前記したサッスオーロ戦での勝利で1950/51シーズンにコモが記録した「32試合引き分けなし」というリーグ記録を更新した。パレルモに勝利したことで37試合まで伸ばし、ホーム連勝記録も29に伸ばしている。
だからと言って隙がないわけでない。
パレルモ戦ではフィオレンティーナ戦以降、無失点だった守備に一瞬の隙を突かれ6試合ぶりに失点を喫しているのは教訓にすべき事柄だろう。また新システム採用後、相手攻撃陣のクオリティーが高ければ失点を喫するほどのミスがたびたび見られるのは懸念材料ではある。
これから始まるUCLベスト16からの戦いは「LIVE or DIE」であり、生き馬の目を抜く世界である。小さなミスが命取りになりかねない戦いが待っている。
www.calciomercato.napoli.it思い返せば、昨シーズンのUCLで敗れたバイエルン・ミュンヘン戦2ndレグはDFパトリス・エブラとMFポール・ポグバの“お見合い”をかっ攫(さら)われMFトーマス・ミュラーの同点弾の要因を作っているのを覚えているファンは少なくないはずだ。
そういうミスを強豪になればなるほど見逃さないし、ビッグゲームになればなるほど勝敗を左右するのがUCLの舞台である。しかし、昨シーズンのバイエルン戦を知らない主力はイグアインだけである。その点だけでも今シーズンは期するものが大きい。
近年のUCLの優勝チームをみると、ベイルとスアレスの加入はチームに多大な貢献を果たしている。ユベントス創設以来初の大型補強でチームに加入したイグアインは、スペインの巨人たちの前例に並ぶことができるのだろうか。
いささか高揚した気分で今シーズンのUCLを楽しみたい。まずベスト16で対戦するポルトに、昨年に行われたグループステージとは“別モノ”のユベントスがどこまで欧州で通用するのか。まずその第一段階を日本時間23日早朝に確認できるはずだ。
著者/Juventus Journal 編集部 山口 努
コメント
本当に昨年のバイエルン戦はもったいなかったですね
こう見るとCLの制覇にはレアルでいったらベイル、バルサでいったらスアレスなど新加入選手の活躍で達成してる。そのセオリーでいけばイグアインも十分にありえる
最近のイグアインの活躍を見ていると、近年のユベントスにはいなかったクラスのストライカーですし期待が大きくなりますね!
ユヴェントスの4-2-3-1はFW陣の疲労が多いかなと思います
アッレグリ監督も4-2-3-1をずっと使うわけではないと言っていたので
ここ一番の時に使うフォーメーションかなと
リーグ戦とは違う欧州の試合で新フォーメーションがどこまで通用するか楽しみです
確かにそうですね
3-5-2との併用も効果的だと思いますが、前線に故障者が出なければ4-2-3-1でCLに挑むと思います。
年齢的体力的に不安のある今のユーベで
消耗の激しいチンクエステッレはシーズン最後までゴールに迫る圧力を維持できるかは不安なのだが
ここからさらに前線の決定力があがるにつれて
そこらへんのペース配分とカウンターの効率も向上するとおもう。
第一の仮想敵としているであろうバイヤンバルサマドリーには
今までの相手にボールもたせて1点差守りきるようなカテナチオスタイルでは厳しいので
自ら主導権とリスクを取ってそれをゴールに結び付けていく戦い方を磨いてさらなる高みにいきたい。
ディバラのようやく新システムに馴染みましたね。ポルト戦を前にポジティブな要素ですね。キエッリーニやバルザッリも居ませんでしたが、ベネティアがしっかり埋めてくれました。前線の連携よ良くなっているので、あとを気を引き締めてやれば勝てると思います。
来夏の補強はCLでどこまで行けるかによると、思いますが、4-2-3-1を続けるなら前線の補強が大切ですね。今はあまりにもサブが少ないですし。候補はベラルディなどですかね。コマン買い取らない売らないのもありと思うのですが、。
まずはしっかり敵地で勝ってほしいです。
新システムは守備陣の高齢化&故障離脱も上手くカバーできていますね
コマンは人間性を含めて考えると何とも言い難いですね。モラタがサイドアタッカーとして居れば、かなり強力な補強になると思っています。
もしアッレグリが昨シーズンからこのシステムを想定していたのであれば、その構想にモラタがいたはずです
コマンはバイエルンが買い取らなくてもチームに呼び戻さないとマロッタCEOは言っています。ボヌッチの件のように規律を重んじるユベントスがチーム批判をしたコマンを呼び戻すとも思えませんし、既にピアッツァ、オルソリーニ(レンタルで武者修行の可能性も)、さらにベラルディの復帰(50億近い金を出すとは考えにくいが)の可能性があるのでポジション的にも居場所はないと思います。
モラタはよほどユベントスにとって魅力ある条件でないと復帰はないと思います。また、クロトーネ戦でストゥラーロをワイドに置いた点からも4-2-3-1が基本になると思います。おっしゃる通りこれだと前線の駒不足は否めません。アッレグリ監督の去就もはっきりしていないので来シーズンはわかりませんが今シーズンは4-2-3-1が上手くいっているのでいじらないほうが良いと考えます。イタリアは例外はあるものの選手登録は25人なのでこの点も踏まえての補強戦略を考慮することになると思います。
いよいよポルト戦も近づいてきました。
これまでは最強の盾と呼ばれていたユヴェントス守備力に対し、新システムは最強の矛足り得るのか。いまからワクワクが止まりません。
盾と矛が高レベルで融合できたとき、ジジがビッグイヤーを掲げる姿を見れると信じています。
ブッフォンにとって、今季来季辺りが最後の勝負の年になるかもしれません。そういった意味でもビッグイヤーを掲げて欲しいですね