コラム : おれたちが愛したユベントス
著者:J-JOURNAL 編集部 座間 遼祐
おれたちのユベントスが帰ってきた。
先日のインテル戦は、まさにそう思わせてくれる戦いぶりだった。
“新”イタリア王者をホームに迎えての一戦。
ジャンパオロ・カルバレーゼ主審の“暴走”もあり、両クラブともに退場者を出す波乱万丈のゲーム展開となったが、ビアンコネーリは3-2と辛くも勝利。
9連覇の偉業を成し遂げた“元”王者としての意地を見せ、UEFAチャンピオンズリーグ(CL)出場権獲得に向けて価値ある「3」ポイントを掴みとった。
シーズン最終盤にして、ようやく“ユベントスらしさ”を取り戻した老貴婦人。
しかし、今季の戦いぶりに関して正直な感想を述べさせてもらうと、出口の見えない長いトンネルをひたすら歩いているかのようだった。
「盛者必衰」という言葉があるように、サイクルはやがて終わる。
それは致し方ないし、つねに頂点にいつづけることは難しい。それは筆者も充分に理解している。
しかし、今季の選手たちには勝利に対する飢えを感じられず、ユベントスという皮をかぶった「別の何か」にすら見えることもあった。
それはホームで0-3と大敗を喫したミラン戦後のアレッサンドロ・デル・ピエロ氏の言葉にもよく現れている。
「ユーベは空っぽだった。失点した後でさえ、喰らいつこうとしなかった」
これまで古巣を鼓舞するようなコメントが多い元ビアンコネーリのバンディエラでさえ、今季のチームの“惨状”を見て、いろいろ思うところがあったのだろう。
イタリアのトップに君臨しつづけた9年間、クラブは大きく成長し着実にその力を伸ばしていった。
しかし一方で、選手たちや我々ティフォージは勝利に慣れすぎてしまったのかもしれない。
現在のビアンコネーリは各国を代表するジョカトーレで構成された、言わば“スター軍団”だ。
クリスティアーノ・ロナウドやパウロ・ディバラなど世界的に有名なジョカトーレがいて、ロドリゴ・ベンタンクールやマタイス・デ・リフトといった将来有望な若手も多く在籍している。
だが、逆境になったときの彼らはあまりにも脆い。
ひとたび失点すれば俯(うつむ)き、肩を落とす。最後まで闘う姿勢を見せているのはせいぜいダニーロと新加入のフェデリコ・キエーザぐらいだろうか。
現在と比べればスカッドはやや地味ではあったが、“あの頃”のユベントスはそうではなかった。