コラム:ユベントスの根幹
セリエAで5連覇を達成したクラブは2つしかない。近年では2005年から2010年までのインテルと、1930年から1935年までのユベントスが記録に記されている。
ユベントスは2015-16シーズンの今季、81年前にビアンコネーロの先人たちが築いた大記録に挑む。
4連覇に導いたといっても過言ではないMFアンドレア・ピルロ、MFアルトゥーロ・ビダル、FWカルロス・テベスの退団は大きな損失だが、クラブにとって「血の循環」は必要不可欠な作業だ。
力のあるベテランに頼ってばかりにいるとゆくゆくは「世代交代の失敗」を招き、失敗したチームの末路が悲惨極まりないのは周知の事実だろう。昨季までのインテルとACミラン、そして以前のユベントスもそれは当てはまるものだった。
2007年にセリエA復帰以降、アントニオ・コンテ就任までの4シーズンは世代交代に失敗したチームの部類にいた。4年間タイトルもなく、とくに2009年からの2年間は7位でシーズンを終えている。すると、名門の凋落(ちょうらく)とまで囁(ささや)かれたことを覚えているファンも少なくないだろう。
では、なにがユベントスを変えたか。
2010年春にアニェッリ家の御曹司が48年ぶりにユベントスの会長職に就任したことが挙げられるだろう。イタリア屈指の自動車メーカーFIAT創業者の直系でもあるアンドレアの会長就任は、チームに変革をもたらした。ちなみにアンドレアの父親ウンベルト、伯父のジョヴァンニ、祖父のエドゥアルドも会長職を歴任している。
アンドレアは2010年に会長に就任したが、コンテやマッシミリアーノ・アッレグリのように就任初年度から結果こそ残すことはできなかった。だが、翌年春にはコンテを招聘し、ピルロ、ビダルを加入させ、ここから連覇を含めた快進撃をスタートさせている。また、イタリア国内では経済への見識も高いことから、政界入りを熱望されたが“一族”の誇りでもあるユベントスの会長職を選んでいる。
近年のユベントス成功の大きな要因とされている、イタリア初のクラブ所有のユベントス・スタジアム建設もアニェッリ家の先見性と無関係ではない。
今季はライバルチームたちが積極的な補強をすすめ、ユベントスでは怪我人が多く「スタートダッシュ」に一抹の不安があるのはたしかだ。しかし、スーペルコッパでは新戦力のFWマリオ・マンジュキッチ、FWパウロ・ディバラがそろって結果を残し、7回目の大会制覇に導く活躍をみせた。
試合内容は非難の対象にもなったが、近年チームの根幹をなした選手がチームを去ったうえにこの時期にシーズン終盤のような戦いを求めては、いささか酷というものだろう。
またスーペルコッパでは3-5-2のシステムで戦ったが、アッレグリがやりたいのは4-3-1-2との併用のはずだ。いまだ「1」の部分は決まらないが、ここまで待たされるとアンドレアを中心としたフロントの決定が楽しみですらある。
ともかくも、ユベントスは今季81年前にビアンコネーロの先人たちが築いた以来となる5連覇をめざす。近年のセリエAにとっても“真の”5連覇だ。
1923年にアニェッリ家がユベントスを買収以降、チームとFIATグループは切っても切れない関係にある。お互いに努力をかさね、ユベントスは「世界の名門クラブ」に数えられ、FIATはフェラーリ、マセラティ、アルファ・ロメオといった高級車を傘下におさめる「世界のFIAT」になった。
多少神秘的にいえば、およそ半世紀ぶりアニェッリ家の人間が会長職に就任した2010年の春からユベントスの躍進は約束されていたのかもしれない。
だからと言って、今季は5連覇を成し遂げ、欧州チャンピオンズリーグでも決勝に進み、コッパ・イタリアでも王者が約束されているわけではない。結果が分からないからこそ、フットボールを、ユベントスを楽しめるのではないだろうか。
かのルチアーノ・モッジは「チーム作りが成功したかどうか、シーズンがある程度進まなければ判断できない」とした上で「結局のところすべてはピッチ上で決まる。それがカルチョというスポーツだ」という言葉を残している。
ユベントスの5連覇への“登頂”は24日1:00(日本時間)その第一歩目を踏み出す。
著者/Juventus Journal 編集部 山口 努
コメント
デルピエロの処遇が??だったがポリシーあっての判断なんだろうな