コラム:ユベントスの“バンディエラ”
2019/10/06
人の生涯と同じように、フットボールのキャリアにも“終わり”があるからこそ、それは美しく儚いのかもしれない。
2019年10月3日、元ユベントスの“バンディエラ”MFクラウディオ・マルキージオは33歳という若さにしてカルチョの世界に別れを告げた。
「たくさんのオファーが届いていたよ。でも『クラウディオ』(自分自身)に敬意を払わなければいけなかった」
引退会見で語ったこの言葉は、他のイタリアのクラブへの移籍を頑なに拒みつづけてきた、如何にもマルキージオらしい言葉だった。
8歳のころにビアンコネーリへやってきたこのイタリア人MFは、25年間というキャリアのほとんどをユベントスに捧げてきた。
2006年のカルチョポリの影響によるセリエB降格。ユベンティーニにとっては暗黒期ともいえるこの時代、クラブの生え抜きであったマルキージオのトップチーム定着は、いま振り返ると、暗闇に射し込んだ一筋の光だった。
その端正な顔立ちとは対照的な泥臭いプレーも厭わない献身性、クラブへの愛を貫くその真っ直ぐな姿勢は瞬く間にティフォージの心をつかんでゆく。
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