コラム:21年ぶりの欧州制覇に向け
昨季のスタートが不安定な空模様だったならば、今季は天気予報こそ晴れマークだが、実際は雲の多い空だった気がする。その要因として今夏のユベントスが行った大型補強は、ファンから謙虚さを奪ったことが挙げられる。
MFポール・ポグバをマンチェスター・ユナイテッドに9200万ポンド(約130億円)で売却し、その資金を元手にFWゴンサロ・イグアインを9000万ユーロ(約104億円)でナポリから獲得。今季のサッカーシーンを席巻したビッグディールだ。
ローマから技巧派MFミラレム・ピアニッチ、欧州制覇を肌で知るDFダニエウ・アウベスはバルセロナからやって来た。ほかにも強力なバックアッパーたちの獲得といったピンポイント過ぎる補強も盤石な評価、そして楽観的な空気を作るのに十分過ぎた。
開幕3連勝を飾りはしたものの、何か煮え切らない。欧州制覇を目論むバイエルン・ミュンヘン、バルセロナ、レアル・マドリーは開幕から大量得点で勝利する内容と結果をみると“見劣り”感は否めなかった。
チームを動かす、歯車こそ大きくはなったもののどこか噛み合っていない、そんな状況だった。また、新戦力組に遠慮を感じさせるシーンも多々見受けられた。鉄壁で知られたユベントスの、らしからぬ失点の数々が最たる例だろう。
機械が精巧になればなるほど部品が精密になり、小さな不具合でも起きれば誤差が生じる。磨かれすぎた3-5-2のフォーメーションは、現ユベントスの大きな武器と同時に弊害ともなっている。
開幕したCL(チャンピオンズリーグ)ではヨーロッパリーグ王者セビージャに攻勢を強めながらも0-0で引き分け、迷走するインテルとのイタリアダービーを1-2で落とすと、マッシミリアーノ・アッレグリ監督の堪忍袋の緒がとうとう切れた。
新加入組を含めた多くの選手が「ひどく怒っていた」と語るミーティングを経て、そこからチームはCLを含め内容の伴う連勝街道を突き進む常勝軍団に姿を変えた。もはや“天気”に左右されない力強さをチームから感じるはずだ。
これまで、好調なときを過ごしていたピアニッチを途中出場させるなど、不可思議な選手起用もあった。アッレグリ監督の試行錯誤は留まることはない。CLのディナモ・ザグレブ戦ではFWファン・クアドラードをCMFで起用するなど、チームはまだ調整段階にあり、それは更なる高みを見据えている確たる証拠だろう。
エースのFWパウロ・ディバラも「セリエAを6連覇すればユベントスは歴史に名を刻むことになる。だが、CL制覇はリーグ制覇より更に大きな意味がある」と口にしている。
その偉業を複数回経験するアウベスも同様である。おそらく、現在のチーム状況がCL制覇まで辿り着けるだけの力があることを確信しているからこそ「欧州王者になることだって可能」と口にしたはずだ。
ユベントスはまだ世界に冠たるビッククラブではない。今回のポグバのように、メガクラブから主力の引き抜きから避けては通れない。だが、21年ぶりの欧州制覇に向け、今季加入したばかりのイグアイン、ピアニッチ、アウベスに積極的に起用するのは昨季の経験を踏まえてのことに違いない。
昨季加入したディバラ、FWマリオ・マンジュキッチには慎重を期した。怪我で出遅れたMFサミ・ケディラも同様である。8戦を終え3人合わせて14試合3得点1アシストだった記録は、今季加入した3名とでは大きく異なる。20試合9得点6アシストと、文字通り「即戦力」としてチームに勢いを持たせている。
今冬にも即戦力が到着しそうな雰囲気だが、長期離脱中のMFクラウディオ・マルキージオが戻ってくれば、大きな“補強”となる。すでに欧州の強豪とも渡り合えるだけの力はすでにあり、そのことは昨季CLでのバイエルン戦で証明している。
ディバラの言葉ではないが、セリエA6連覇はたしかに偉業だ。しかし欧州制覇をなし遂げた暁には、これまでユベントスが辿ってきた険しい道のりが日の目を見ることになるだろう。チームのバランス、選手層を考えると今季のCLには期するものが大きい。
ユベントス、とは不思議なクラブだ。強豪かも知れないが、古豪ではない。華麗か、地味かと問われれば、後者が勝るはずだろう。CLでは優勝候補に挙げられるとつまずき、ノーマークだと決勝戦まで勝ち進む稀有なクラブだ。
それゆえにコアなファンが多いのは気のせいだろうか。そのクラブに深い愛情を注ぎ、着々と認知を広めているユベントス・ジャーナルにこの場を借りて2周年の祝辞を述べたい。
著者/Juventus Journal 編集部 山口 努
コメント
ヨーロッパに行くと地味というか、相手なりに戦ってしまうのがユーヴェのイメージです。楽な試合は無いとは言え残りのグループリーグは全勝するくらいの勢いが無いと優勝までは厳しい気がしますねぇ。
マルキージオが戻ってからが本当のユーヴェという言い方もできますし、しっかり治して戻ってきてほしいです。
確かに大型補強しましたが、CL優勝に向けての浮かれ気分は収まっていますね。
失点の形や、中盤の組み合わせなどが高揚感を奪って慎重になっていったのかと。
マルキージオが戻ってきたベストのスタメンを見てみないと
「ぼんやりとした不安」が晴れないかな。
クアドラードがCMFでもうまくいくと面白いですね
スーパーマルチロールだ。