コラム:クラブ史上初の暗い船出
ユベントスのオールドファンですら、これほどの不名誉な記録は記憶にはなかったはずだ。それもそのはずで、クラブ創設以来から開幕2連敗はこれまでなかった。
昨シーズン、史上初の3冠にあと一歩だったチームらしからぬスタート。ユベンティーノならば暗澹(あんたん)たる気分にさせられているはずだ。その原因が新規獲得した選手たちと主力選手たちの相次ぐ怪我なのか、望んだトレクアルティスタ(トップ下)が獲得できなかったからなのか、ただ言えるのはチームの根幹をなしていた3人の退団が予想以上に大きいのは確かだ。
セリエAを4連覇に導いたMFアンドレア・ピルロ、MFアルトゥーロ・ビダル、欧州での勝利に貢献したFWカルロス・テベスの退団は大きな損失だとしても、守備陣にまったくの変化がなかったのだから大した慰めにはならないだろう。
開幕戦から3−5−2のシステムを敷き、レジスタの位置に入ったのはMFシモーネ・パドインだった。ピルロが去った現在、MFクラウディオ・マルキージオほどの献身性はあってもクオリティーにいたっては遠く及ばない。
昨季もこの位置を任され安定感を披露したが、そのときは隣にビダルがいて、前線にはテベスがいた。開幕戦のウディネーゼ戦では一瞬の隙を突かれ0-1で惜敗し、2節のローマ戦ではサンドバックのように叩かれまくって1-2で敗戦。同じようにパドインも試合後にメディアから「低調なパフォーマンス」と叩かれたが、いささか酷なバッシングであるし、チーム屈指のユーティリティプレイヤーに同情を寄せたい。
第3節では今季好調のキエーボをホームに迎えるが、チーム状態を象徴するかのような不運な失点を前半5分に決められ、この試合で復帰したマルキージオがふたたび怪我を負い、前半で退く。その後もPKによって1点を加えるがドローゲームに終わる。
開幕から1分2敗。そんな状態でむかえたUCL(欧州チャンピオンズリーグ)初戦マンチェスター・シティは、下馬評では圧倒的な不利に立たされた。イングランド・プレミアリーグでは開幕5連勝中に加え、無失点。また、ユベントスがイングランドの地で勝利したのは1996年以降なかったことも下馬評に説得力を増した。
だが、勝利したのはユベントスだった。後半25分にFWマリオ・マンジュキッチの同点ゴール後にシティの大黒柱DFヴァンサン・コンパニが怪我を負い、後半30分にピッチを去る幸運があったとしても、後半36分にFWアルバロ・モラタが逆転ゴールを叩き込んだ。
その波に乗り、昨季初の黒星を喫したアウェイのジェノア戦で完勝をおさめる。25日(以下:日本時間)に昇格組のフロジノーネをホームに迎え、27日アウェイのナポリ、10月1日にはUCLセビージャ戦に万全の体制で戦うはずだったが、昇格組にアディショナルタイムに同点弾を浴び、よもやの勝ち点1獲得に留まった。
順風満帆なときは何をやってもうまくいく。これからも現在のような荒波は続くだろうし、それらに遭遇したときに立ち向かう強さが“これからのユベントス”を作っていくはずだ。どんなに嘆いても、黄金期に導いたメンバーは返って来ないが、新ユベントスでのUCLの勝利はチームにとって大きな自信になるはずだ。
思い返せば、昨シーズン開幕前マッシミリアーノ・アッレグリに対し、懐疑的な目でみられていたが結果は周知のとおりだ。クラブ創設以来初のスタートを切るが、96年以来イングランドの地で勝ったように今季のユベントスに何が起きてもおかしくない。
最近でこそあまり見かけないが、国内リーグこそ奮わなくとも欧州を制すチームがときとして現れる。2002-03、06-07のACミランや04-05のリヴァプールがそうであったように。
著者/Juventus Journal 編集部 山口 努
コメント
完全に記憶違いだった
ありがとうございます
チェルシーに勝ったのはホームでアウェイでは引き分けでしたね。
2012年にユーベ、CLでチェルシーに勝たなかったっけ?