コラム:ユベントスが決断した「宝石」との別れ
著者:J-JOURNAL 編集部 山口 努
「ユベントスに在籍したければ、高望みをしてはいけない」
「たとえ、希望額より少なくても、それで満足しなければならない」
そう語ったのはビアンコネーリの永遠のバンディエラ、アレッサンドロ・デル・ピエロだ。
ビアンコネーリでのキャリア晩年となった2009年、2011年まで契約更新をしたのは、バンディエラが35歳のときだった。
前途の「名言」通り、クラブが提示した大幅な減俸を受け入れ、そのこともまたユベンティーニを喜ばせた。
契約を更新した2009年。現在のアリアンツ・スタジアムはまだこの世に存在していない。
そして、2011/12シーズンにイタリア初のクラブ所有のスタジアムを使用し、スクデット奪還をしたことでユベンティーニの記憶に色濃いシーズンになっているはずだ。
前途の契約を満了直前となった2011年5月、ユベントスはデル・ピエロと新たに2012年6月まで契約を更新させている。
ところが、2011年10月の株主総会が終わると“ユベントス・スタジアム”建設の発起人となったアンドレア・アニェッリ会長は、決断する。
クラブにすべてを捧げたバンディエラと、2012年以降の契約を更新しないことを公言した。
しかしデル・ピエロはプロとして、シーズン最後まで尽力し、かつての盟友アントニオ・コンテらとともにスクデット奪還に貢献。
ミランと激しいスクデットレースを制し、2005/06シーズン以来となるイタリア王者に返り咲いた。
個人的には、“ユベントス・スタジアム”でのラツィオ戦で叩き込んだ直接FKが脳裏に焼き付いており、あのゴールがスクデットを大きくたぐり寄せたとすら感じている。
プロとしてユベントスにすべてを捧げたバンディエラは、シーズン最終節アタランタ戦でもゴールを決め、ユベンティーニの涙を誘った。
Sky Sportそのデル・ピエロは、現在チームの背番号「10」を任せられるパウロ・ディバラと親しい関係にある。
両者の間でどのような会話がおこなわれているかは知る由もない。
しかし、「ユベントスのディバラ」は今シーズン限りになる。
ジュゼッペ・マロッタが去ってから、空位となっていたクラブのCEO(最高経営責任者)に就任したマウリツィオ・アッリバベーネが断言した。
争点は「ディバラの年俸」とされていたが、アッリバベーネCEOは「我々が注視したのは試合への将来性だった」と強調。
そして、「我々ユベントスの経営陣はユベントスに対して決定を下さない」とし「ユベントスの経営陣はユベントスの利益のために決定を下す」と方向性を示した。
この言葉こそ、今後のクラブの考え方になるだろう。
serieanews.comアッリバベーネCEOの言葉を目にしたとき、筆者はファビオ・パラーティチを思い出した。
新型コロナウイルスにより、甚大な被害を受けたフットボール界だが、ユベントスは被害の大きい“部類”に入るだろう。