コラム:ユベントスを愛し、愛するクラブに舞い戻ってきたスペイン人ジョカトーレ
2020/11/13
著者:J-JOURNAL 編集部 山口 努
「アルバロ・モラタ」という名前を初めて目にしたときの心境を現在でも鮮明に覚えている。
端的に記すのならば、各年代のスペイン代表に選出され、2000万ユーロでビアンコネーリに加入するが、活躍すれば3000万ユーロでレアル・マドリーに戻らなければならない。
クラブの資金のうえでは1000万ユーロの増収になるとはいえ、「ずいぶんとふざけた契約だな」と感じたのは筆者だけではないはずだ。
モラタがトリノにやって来た2014年当時、スクデットを連覇しているとはいえ欧州のメガクラブからみたユベントスは、まだまだ世界の“プロビンチャ”だと痛感した出来事だった。
当時はFWカルロス・テベスが力強く攻撃陣を牽引し、同胞のフェルナンド・ジョレンテにサポートされたモラタは、“兄貴”の控え要員だった印象が濃い。
カンピオナートでもたびたび簡単なシュートを外す一方で、驚くほどテクニカルなゴールをいとも簡単に決める、そんなFWだったと記憶している。
しかし、マッシミリアーノ・アッレグリはこのポテンシャルを見逃さなかった。
加入当初は総合力に勝るジョレンテを先発させ、モラタは途中から投入するオプションに過ぎなかった印象が強く残っている。
そんなある試合。交代を命じられると靴下の色を間違え、アッレグリがペットボトルを投げつけ、蹴り上げるほど激怒したことを覚えているユベンティーニも少なくないはずだ。
それでも2014年が終わり2015年に入ると、徐々にジョレンテからポジションを奪っていき、スターティングイレブンにも名を連ねるようになる。
この少し“ぬけた”若きスペイン人FWが、その能力を最大限に発揮したのはUEFAチャンピオンズリーグ(CL)の舞台だった。