コラム:ユベントスのDFに求められるもの
著者:J-JOURNAL 編集部 山口 努
新型コロナウイルスにより全世界のフットボールが中断を迎えると『スカパー!』や『DAZN』では過去の名勝負を放送していた。
ビアンコネーリの試合に限らず、数試合を観戦し、結果を知っていても名選手たちの現役時代のプレーに興奮を覚えずにはいられなかった方も少なくないのではないだろうか。
そして、目まぐるしいほどフットボールが進化したことは誰の目にも明らかだったはずだ。
顕著に映ったのは、DFラインからの組み立てだろう。
現代ではDFやGKにも「繋ぐ」ことが求められ、ただ蹴り返すだけで良かった時代が懐かしく感じられた。
それでも「名勝負」として放送される試合では、チロ・フェラーラ、パオロ・モンテーロ、マルク・ユリアーノ、イゴール・トゥドールといった「いぶし銀」たちが光っていた。
「繋ぐ」という能力が求められていない時代とはいえ、リリアン・テュラムほどの才能を感じさせなくとも「守る」という能力では抜群の強さをみせていた。
どの選手にも共通していたのは「待たない」ことだったように感じられた。乱暴な物言いを許して貰えるのなら、とにかく相手に「ブチ当たる」。
ボールがマークしているFWに預けられた瞬間に「ブチ当たる」。それもファウルすれすれの際どいものだが、DFにとっては立派な技術だ。
マルチェロ・リッピの「やり方」なのだろうが、相手FWは嫌気が差すほど、屈強という言葉が当てはまる守備陣だったように映った。
その理想形がファビオ・カンナバーロだろう。2006年にバロンドールを獲得した最大の要因はこの「ブチ当たり」が大きく影響しているように感じる。
およそ「175cm」というCBとしては小柄すぎるほどの体躯を感じさせない能力は、個人的な見解だが「ブチ当たる」ことが最も秀でていたと考えている。
丁寧な言葉で記せば「前で獲る」。または「刈る」と記せば良いのだろうか。
カンナバーロと前途のリッピは2006年にワールドカップを掲げる師弟関係だが、1993/94シーズン、ナポリでともに戦っているのは偶然ではないだろう。
また、1988年にナポリのユースに加入したのちのバロンドーラーは、“不出世の天才”ディエゴ・マラドーナと練習をともにしている。
こんな逸話がある。