コラム:アッレグリが今シーズン掲げた目標
今シーズンほどの劇的なシーズンは、今後体験できるかどうか分からない。ファンにとっても“忠誠心”を試される一年だったはずだ。序盤は、アントニオ・コンテ前監督が来る以前のユベントスを思い出さられるほどだった。
しかし、今シーズン見事5連覇を達成した。物語としては出来すぎている。
開幕前、マッシミリアーノ・アッレグリ監督は「クラブ全体が変わる必要がある」と語った。「ユベントスには才能あふれる若い選手たちがいる」と言い、FWカルロス・テベス、MFアルトゥーロ・ビダル、MFアンドレア・ピルロに変わりうる選手たちがいるとも断言していた。
「これから皆で団結し、個人もチームもさらに成長していく必要がある」と話していた。理想論を掲げたものの、主力を失い迎えた今シーズンは史上初の開幕2連敗でスタートを切るとはさすがに思わなかっただろう。
実際、ユベントスのファンを含めたすべての人間が慌てた。第10節終了時に12位と10位以上に順位を上げることはなく、アッレグリ監督の解任論まで噴出する。そんなチームは、第10節に新興勢力のサッスオーロに0-1で敗れる。
この敗戦に近年のユベントスのすべてを知る、GKジャンルイジ・ブッフォンが激怒する。「僕らはもっと責任感を持たなければいけない。ユベントスでプレーする以上、チームのために戦うつもりがなければ、哀れな姿をさらすことになる」と檄を飛ばした。
この言葉に叱咤されたチームは、サッスオーロ戦後から怒涛の連勝街道を駆け抜ける。クラブ新記録の13連勝も通過点にすぎなかった。順位も着々と上げ、首位を争うまでになる。迎えた第25節では、ナポリとの首位決戦を1-0で制すると今シーズン初の首位を奪回する。
その後ボローニャ戦に引き分け、クラブレコードは15連勝で終えたものの翌インテル戦からフィオレンティーナ戦まで9連勝を飾ると今シーズンのスクデットを獲得。今シーズンの目標の一つだった5連覇を無事に達成した。
やはり悔やまれるのは、UCL(欧州チャンピオンズリーグ)ベスト16でのバイエルン戦だろう。ホームで迎えた1stレグを0−2でリードされるも、後半に追いつき2-2で終えたチームは、2ndレグでは2−0とリードし前半を終えた。
2年連続のベスト8が見えたが、後半に1点返され、アディショナルタイムに追いつかれ、延長戦に2点を奪われ、2戦合計4-6の敗退。このときの敗戦をブッフォンは「2−2にされたとき、精神的に落胆しすぎてしまった」と振り返っている。
スポーツに「もし」は禁句だが、2ndレグでFWパウロ・ディバラ、MFクラウディオ・マルキージオ、DFジョルジョ・キエッリーニが怪我で欠場しなければ、結果は違ったものになっていたかもしれない。
アッレグリの開幕前の提言通り、クラブは変わり、若い選手たちはその才能をいかんなく発揮し、皆が団結し、チームも個人も成長の足跡を残した。今シーズンなし遂げた5連覇も“ノルマ”として設けていたファンは、少なくないはずだ。
シーズン序盤につまずいたとき、いささか少年じみた願望をファンならば抱いたはずだ。「今は下位にいるが、ここから右肩上がりに順位を上げていくはずだ」という妄想を。ただ、それを現実にした今シーズンのユベントスは見事と言うほかない。
物語としては欠陥がある。物語ならば、昨シーズンのUCL決勝戦で敗れたチームは、今シーズンこそ優勝してそれを終えなければならない。ただ、UCLの敗戦を振り返ると2年連続で“ベストメンバー”では戦えていないのが、せめてもの慰めになっている。
昨シーズンの準決勝レアル・マドリー戦での戦い方が、現状でのベストではないだろうか。つまり終盤の「3-5-2」での逃げ切りだ。自分たちのやりたいことをやって勝てるほど、まだ、現在のユベントスはそこまで強くないのが現状だろう。
実際、第37節のヴェローナ戦では多くの主力を欠き、1-2で敗れた。少し失礼な物言いをさせていただくと、プロビンチャ相手に1.5軍で勝てないようでは、来シーズンも欧州制覇は遠い夢のままだろう。美しい物語を紡ぐには、もっと屈強なチームにならなければならない。
著者/Juventus Journal 編集部 山口 努
コメント
アンドレゴメスは守備的な選手じゃないからマルキジオの代わりにはならないけど、
中盤の底上げの為には是が非でも欲しい選手。
シーズン通して常にベストメンバーでは挑めない以上、控えの底上げは必須でしょうね。来シーズンはマルキージオが序盤でいないので、レギュラークラスの獲得ができれば、必然的に底上げにはなるでしょうけど。
アンドレ・ゴメスなんて噂もありますが、プレースタイル的にどうなんでしょう。